PC・NAS向けUPS6選 矩形波と正弦波の差は千円
停電でPCが落ちて作業が飛ぶ、NASが書き込み中に電源を失う。それを防ぐのがUPSですが、安いモデルの多くは矩形波を出力していて、今のPCの電源とは相性が良くありません。守るつもりで買ったのに、停電したときに落ちる構成になります。
もうひとつ外しやすいのが容量です。製品名に付いている数字はVAで、実際に賄えるW数とは別物です。同じメーカーの製品で、VAが小さいほうがWは大きい、という並びが普通に起きます。この2点を先に押さえてから、1万円台から5万円台までの6台を見ていきます。
目次(12項目)
UPSに求めるのは駆動時間ではない
最初に前提を置き直します。UPSは停電中も作業を続けるための道具ではありません。必要なのは、書き込みを終わらせて安全に電源を落とすまでの数分です。
ただし例外がひとつあります。Wi-FiルーターとONUは消費電力が小さいので、同じUPSにつないでおくと停電中も通信だけは残ります。ノートPCは本体の電池で動くので、この2つが生きていれば数十分は作業を続けられます。
ここを取り違えると、容量の大きいモデルを選ぶ方向に流れます。実際に効くのは、停電を検知してからOSにシャットダウンを始めさせる仕組みのほうで、これは容量ではなく接続と対応ソフトの問題です。1万円台のモデルでもPCとモニターを数分持たせることはできます。
最初の分岐は給電方式ではなく出力波形
製品ページでいちばん目立つのは給電方式ですが、家庭やSOHOで先に効くのは出力波形のほうです。停電したときにUPSが自前で作る電気の形が、矩形波か正弦波かで分かれます。
今のPCやサーバーの電源ユニットには、力率改善(PFC)回路が入っています。オムロンはこれについて、PFC電源は入力波形が正弦波であることを前提に設計されているため矩形波ではうまく動作しない可能性があり、バックアップするUPSは正弦波出力タイプを強く勧める、と案内しています。矩形波出力のUPSは正弦波入力のみの機器には使えない、とも書かれています。
症状として出るのは、停電した瞬間に保護回路が働いてPCが落ちる、あるいは異音がする、といった形です。守るために買ったUPSが、停電のたびに電源を落とす引き金になります。
この前提は、つないだ先のPC側でも確かめておく価値があります。ATX電源はほぼ全機がアクティブPFCなので、UPSの側を正弦波にそろえるのが答えになりますが、PC側の電源そのものを選び直すならPC電源ユニットの比較記事にATX規格の版と保護回路の話をまとめてあります。
| 出力波形 | PFC電源のPC | ルーター・ONU | この記事の該当機 |
|---|---|---|---|
| 矩形波 | 推奨されません | 使えます | APC ES 550 |
| 正弦波 | 使えます | 使えます | 残りの5台 |
給電方式は3つあるが、家では差が出にくい
そのうえで給電方式です。こちらは常時電気をどう通しているかの違いで、3系統に分かれます。
| 方式 | 普段の動き | 切り替え | 価格 |
|---|---|---|---|
| 常時商用給電 | そのまま流す | 数msの切り替えあり | 安い |
| ラインインタラクティブ | 電圧の変動を補正 | 同上 | 中間 |
| 常時インバータ | 常に作り直す | 切り替えなし | 高い |
切り替え時間はAPCのRS 550で標準6ms・最大10msと公表されています。PCの電源ユニットはこの程度の瞬断なら持ちこたえる設計なので、常時商用給電でも実用上は足ります。電圧が不安定な環境ならラインインタラクティブのAVRが効きますが、方式を上げるより先に波形を確認するほうが失敗が減ります。
VAとWは別物で、しかも比率が揃っていない
容量の表記はVAですが、繋げる機器の合計消費電力はWで見ます。この2つの比率は製品ごとに違うので、VAの大小だけでは比較になりません。
| 機種 | VA | W | 力率 |
|---|---|---|---|
| APC ES 550 | 550VA | 330W | 0.60 |
| APC RS 400 | 400VA | 240W | 0.60 |
| APC RS 550 | 550VA | 330W | 0.60 |
| オムロン BW55T | 550VA | 340W | 0.62 |
| オムロン BN50T | 500VA | 450W | 0.90 |
| CyberPower CP1200PFCLCD | 1200VA | 780W | 0.65 |
下から2行目を見ると、500VAのBN50Tが450Wを賄えます。550VAのBW55Tは340Wです。VAが50小さいほうが、使えるWは110大きくなります。製品名の数字で並べ替えると、この逆転を見落とします。
目安として、ミニタワーのPCとモニター1枚で150Wから250Wあたりに収まります。ここに外付けSSDやNASを足しても300Wを超えることは多くありません。数分持たせるだけなら、330W級で足りる構成がほとんどです。
1万円台:矩形波は守る相手を選ぶ
いちばん安い価格帯には矩形波のモデルが並びます。この記事の6台では1台だけです。
独自採点の規則(4項目・各5点)
楽天のレビューは商品によって件数が1件から数百件までばらつき、件数の少ないものは1人の評価で平均が1点以上動きます。楽天側でレビューが消えると数字も黙って変わるので、順位付けには使っていません。代わりに、下の規則でスペックから機械的に点を出しています。記事に載せている表の値をそのまま当てはめているだけなので、読者が検算できます。総合点は4項目の単純平均です。用途によって効く項目が違うので、総合点だけでなく項目ごとの差を見てください。
- 導入しやすさ
- 参考価格。1万9千円未満=5 / 2万1千円未満=4 / 2万5千円未満=3 / 4万円未満=2 / それ以上=1
- PC本体を守れるか
- アクティブPFC電源のPCにつなげるか。矩形波=1 / 正弦波=5
- まかなえる容量
- 出力W。300W未満=2 / 400W未満=3 / 500W未満=4 / 500W以上=5
- VAに対して使えるWの多さ
- 力率(W÷VA)。0.65未満=2 / 0.8未満=3 / 0.8以上=5。VAが同じでも使えるWは揃っていません
出力波形・VA・W・力率は記事の表によります。給電方式は6台ぶんが揃わないので採点には使っていません(本文で扱っています)。
コンセントが9口あり、ルーターやONU、光電話のアダプタのような小さな機器をまとめて落とさずに済みます。回線を生かしておきたいという目的なら、これで用は足ります。
問題はデスクトップPCを繋ぐ場合です。前述のとおりPFC電源との組み合わせは推奨されていないので、PCを守る目的で買うと本末転倒になります。しかもこのあと見るように、正弦波のモデルとの価格差はほとんどありません。
1万円台:正弦波の壁は千円ほどで越えられる
同じ1万円台に、正弦波を出すモデルがあります。ここがこの記事でいちばん言いたい部分です。
ラインインタラクティブ給電で正弦波を出し、電圧の変動もAVRで補正します。矩形波のモデルとの差は、Amazonの実売で千円ほどです。店によっては矩形波のほうが高いこともあります。
代わりに落ちるのは容量で、240Wしかありません。デスクトップPCとモニターを両方繋ぐには足りず、ノートPCとNAS、あるいはPC本体だけ、という使い方になります。それでも、波形の制約から抜けられる価値のほうが大きい価格差です。
2万円台:容量を上げると型番の見分けが要る
PCとモニターを1台のUPSにまとめるなら、330W級に上げることになります。
切り替え時間は標準6ms・最大10ms、有線LANのサージ保護と3年保証が付きます。330Wあれば、ミニタワーとモニター1枚の構成に余裕を持って収まります。
注意が要るのは型番です。同じRSシリーズにBR550G-JPがあり、こちらは近似正弦波です。末尾がSかGかで波形が変わるので、検索結果のタイトルを最後まで読んでから買う必要があります。1文字の違いが、この記事の最初の分岐そのものです。
2万円台:本体価格ではなくバッテリー代で選ぶ
同じ340W級で、別の払い方をする選択肢があります。
UPSのバッテリーは消耗品で、期待寿命は数年です。交換用のバッテリーキットは1万円前後するので、本体価格だけで比べると総額を読み違えます。この製品は本体3年保証に加えて、購入から1か月以内に登録するとバッテリーの3年間無償提供が付きます。
置きっぱなしにして5年使うつもりなら、ここが効いてきます。給電方式は常時商用なのでAVRはありませんが、波形は正弦波なのでPCに繋げます。
3万円台:VAが小さいのにWは大きい
VAの数字で選ぶと候補から外れるのがこの一台です。
500VAで450W賄えます。上のBW55Tより表記上のVAは小さいのに、使えるWは110大きくなります。力率が0.9なので、VAとWがほぼ揃っている作りです。
約11kgあるので置き場所は先に決めておく必要があります。デスクの下に上げる案は、この重さでは消えます。ケーブルトレーの比較で並べた7台の総耐荷重は3kgから20kgで、UPSを載せられるのは上限側の一部だけです。ラインインタラクティブ給電で電圧の補正も入り、本体3年保証とバッテリーの3年間無償提供、期待寿命5年という条件も付きます。W数あたりで見ると、2万円台の330W級から素直に伸ばせる位置にあります。
5万円台:まとめて繋ぐなら上限側へ
デスクトップとモニターに加えて、NASや外付けドライブも同じUPSに載せる場合です。
780Wまで賄え、コンセントは12口あります。メーカーが純粋正弦波・アクティブPFC互換と明記しているので、波形の心配は要りません。液晶で入出力の電圧と負荷率が見えるため、どれだけ余裕があるかを後から確認できます。
ここまでの容量が必要になるのは、機器の台数が増えた場合です。PC1台とモニター1枚なら、この価格差は使い切れません。
自動シャットダウンはOS側で決まる
UPSを買っただけでは、停電時に自動でシャットダウンはしません。USBケーブルで繋いで、OS側に検知させる必要があります。ここは製品より使っている環境で決まります。
| 環境 | 必要なもの | 設定場所 |
|---|---|---|
| macOS | USBケーブルだけ | 設定のバッテリー項目にUPSの欄が増えます |
| Synology NAS | USBケーブルだけ | DSMのハードウェアと電源にUPSの項目があります |
| Windows | 付属ソフト | PowerChuteなどメーカーのソフトを入れます |
| Linux | NUTなど | パッケージを入れて設定ファイルを書きます |
macOSはUSBで繋ぐだけでシステム設定にUPSの項目が現れ、ドライバーの追加は要りません。SynologyのNASも同じで、DSMの設定画面からセーフモードに入るまでの時間を決められます。ネットワーク経由で複数台に伝える機能もあるので、NASを親にしてPCを一緒に落とす構成も組めます。
NASを買うときは、この対応の有無を先に見ておくと後戻りしません。NASキットの比較記事で挙げている8台のうち、SynologyとQNAPはUSB接続のUPSをOS側から扱えます。24時間動かす機器なので、書き込みの途中で電気が切れる場面に出会う回数がPCより多くなります。
逆に言うと、UPSを買っても繋がなければただの延長タップです。設置したら停電を模擬してシャットダウンまで通るかを一度確認しておくと、本番で気づく事態を避けられます。
まとめ:迷ったときの判断順
VAの数字と価格から選ぶと外します。次の順に決めると絞れます。
- PCを繋ぐか。繋ぐなら矩形波は候補から外します。差は千円ほどです
- 繋ぐ機器の合計は何Wか。VAではなくWで見ます。PCとモニターなら330W級で足ります
- 何年置くか。長く使うならバッテリーの保証と交換費用まで含めて比べます
- OSは何か。macOSとSynologyはケーブルだけで動きます。Windowsは付属ソフトを入れます
UPSは停電が来るまで動作が分からない機械です。買ったあとに繋ぎ方まで確認しておくことが、容量を1段上げるより効きます。
UPSに載せる機器側の選び方はプログラマー向け外付けSSD6選、電源まわりをまとめる話はUSB-Cドック6選にまとめています。