プログラマー向けキーボード比較 HHKB・REALFORCE・Keychronの違いと選び方
キーボードは「高いものほど機能が多い」という感覚で選ぶと外します。この記事で扱う3台のうち、最も高いHHKBが最もキーの少ない機種だからです。値段はキーの数でも機能の数でもなく、方式と作り込みに付いています。ここを取り違えたまま買うと、矢印キーが無いことに後から気づくことになります。
先に決めるべき前提を配ってから、価格帯の低い順に3台を並べます。
目次(9項目)
先に決める3つ
製品を見る前に、自分の側で決まっている条件があります。これが決まっていないと、どのレビューを読んでも判断できません。
ノートPCと併用する場合は、ノートPCスタンドとセットで考えることになります。画面を目線まで上げると本体のキーボードは打てなくなるので、外付けが必須になるためです。
| 決めること | 選択肢 | あとから変えられるか |
|---|---|---|
| 配列 | US / JIS(日本語) | 買い直しになる |
| キー数 | フルサイズ / テンキーレス / 60% | 買い直しになる |
| 接続 | 有線 / 無線 / 両対応 | 買い直しになる |
3つとも、買ったあとに設定で変えられない部類です。逆にキーの重さや打鍵音は、モデル選びやスイッチ交換である程度あとから調整できます。変えられないものから決めるのが順番です。
配列で迷ったら、いま使っているキーボードと同じにするのが無難です。USとJISでは記号の位置と日本語入力の切り替え方が変わるので、両方を行き来すると打ち間違いが増えます。仕事用のノートPCがJISで、外付けだけUSにする構成は、慣れるまでの負担が想像より大きくなります。
値段の順にキーが増えるわけではない
この記事の3台を値段の順に並べると、キーの数は逆に減っていきます。Keychron K8 Proはテンキーレスで矢印キーとファンクション行があり、REALFORCE R3はテンキー付きまで選べます。いちばん高いHHKBは60%配列で、矢印キーもファンクション行もありません。
| 機種 | 価格帯 | 矢印キー | ファンクション行 | テンキー |
|---|---|---|---|---|
| Keychron K8 Pro | 2万円台前半 | あり | あり | なし |
| REALFORCE R3 | 2万円台半ば | モデルによる | あり | モデルによる |
| HHKB Professional HYBRID Type-S | 3万円台後半 | なし | なし | なし |
HHKBで矢印キーを使いたいときは、Fnとの同時押しになります。Vimのノーマルモードで h j k l を使っているなら困りませんが、ブラウザやGUIのアプリでは矢印を押す場面が残ります。Vimだけで一日が終わるわけではないので、Vim以外で困らないかを想像してから決めてください。
この「値段と機能数が一致しない」構造は、キーを減らすこと自体が設計思想になっているためです。指を動かす距離を短くするために意図してキーを削っていて、削るために価格が下がるわけではありません。
方式は2系統ある
| 静電容量無接点方式 | メカニカル方式 | |
|---|---|---|
| 採用モデル | HHKB / REALFORCE | Keychron K8 Pro |
| 接点 | 物理的に接触しない | スイッチが物理的にオン/オフ |
| 耐久性 | 高い(接点が摩耗しない) | スイッチの品質次第 |
| 打鍵音 | 静か | スイッチの種類(軸)による |
| カスタマイズ性 | 基本的に不可 | ホットスワップで軸を交換可能 |
HHKBとREALFORCEは「静電容量無接点方式」という同じ仕組みを採用しています。キーの内部にある電極同士が物理的に接触せず、キーを押し込んだときの静電容量の変化だけを検知して入力を判定します。接点がすり減らないため耐久性が高くなります。
一方Keychron K8 Proは一般的なメカニカルスイッチで、キーごとに独立したスイッチが物理的にオン/オフを切り替える方式です。ホットスワップ対応モデルなら基板を交換せずスイッチだけ差し替えられます。無接点方式にはない「あとから好みに調整できる」自由度が、この方式の強みになります。
2万円台前半:あとから変えられるほうから入る
高級キーボードが自分に合うか分からない段階なら、ここから入るのが確実です。打鍵感が気に入らなくても、スイッチを差し替えれば別のキーボードのようになります。
独自採点の規則(5項目・各5点)
楽天のレビューは商品によって件数が1件から数百件までばらつき、件数の少ないものは1人の評価で平均が1点以上動きます。楽天側でレビューが消えると数字も黙って変わるので、順位付けには使っていません。代わりに、下の規則でスペックから機械的に点を出しています。記事に載せている表の値をそのまま当てはめているだけなので、読者が検算できます。総合点は5項目の単純平均です。用途によって効く項目が違うので、総合点だけでなく項目ごとの差を見てください。
- 導入しやすさ
- 参考価格。2万2千円未満=5 / 3万円未満=4 / それ以上=2
- 打鍵の耐久性
- メカニカル(スイッチの品質次第)=3 / 静電容量無接点(接点が摩耗しない)=5
- 打鍵音の静かさ
- 軸の種類による=3 / 方式として静か=5
- 自分で変えられる幅
- ホットスワップで軸を交換できる=5 / 基本的に交換できない=2
- そのまま使えるキーの数
- 矢印キーとファンクション行が両方ある=5 / モデルによる=4 / どちらも無い=2。減らす思想の機種は覚え直しが要ります
方式・打鍵音・カスタマイズ性は記事の「方式は2系統ある」の表、矢印キーとファンクション行は「値段の順にキーが増えるわけではない」の表によります。
無接点方式の2台と比べると価格は抑えめで、最初の1台として選びやすくなります。ホットスワップ対応なのではんだ付けなしでスイッチを交換でき、購入時に軸選びで悩みすぎなくても後から変更できるのが心理的なハードルを下げてくれます。Mac/Windows切り替えスイッチがあるので、私物と会社支給機を行き来する人にも使いやすい構成です。
テンキーレスなので矢印キーとファンクション行は残ります。60%配列に踏み切る前の中間地点としても使えます。
2万円台半ば:キーの重さを選ぶ
この価格帯の主役は打鍵感です。押下圧を選べるかどうかが、長時間の疲れ方に効いてきます。
HHKBと同じ無接点方式でありながら、こちらはテンキー付き・テンキーレス・矢印キーありなど型番のバリエーションが豊富で、省スペースにこだわらないなら候補に入れやすくなります。APC(Actuation Point Changer)機能を持つモデルは、キーごとに押し込む深さを調整できるため、浅い設定にすれば連打の負担を減らせます。長時間コーディングする人からの評価が高いのは、この調整幅の広さが理由と思われます。
押下圧は30gと45g、それに指の力に合わせた変荷重が選べます。小指でCtrlやShiftを押し続けるVimの使い方では、この差が一日の終わりに出ます。店頭で触れるなら押下圧だけは確かめてから買ってください。数字を読んでも指の感覚とは結び付きません。
3万円台後半:キーを減らす
最上位は、機能を足すのではなくキーを削る方向に振り切った機種です。指を動かす距離が短くなる代わりに、失うものもはっきりしています。
定番と呼ばれる理由は、単に静音というだけでなく、無駄を削ぎ落とした配列思想にあります。矢印キーがなく、ファンクション行も省略された配列は、最初は戸惑いますが数日で慣れます。CtrlキーがAの左隣にあるため、エディタやターミナルでショートカットを多用するときに指の移動距離が短いのも地味に効いてきます。
ただし、慣れるのはキーボードの側であって、アプリの側ではありません。F2で名前を変える、F5で更新する、といった操作が残っているアプリでは、Fnとの同時押しが必要になります。使うアプリを思い浮かべてから決めてください。
静音は方式ではなくモデルで決まる
「無接点方式は静か」という説明をよく見かけますが、正確には同じ方式の中に静音モデルとそうでないモデルがあります。HHKBのType-Sは静音仕様で、無印のHHKBとは打鍵音が違います。REALFORCEにも静音モデルとそうでないモデルがあります。
そのため「無接点だから静か」と考えて型番を確かめずに買うと、思ったより音が出ることがあります。オンライン会議中に打つ機会があるなら、方式ではなく型番の静音表記を見てください。メカニカルでも静音軸を選べば近いところまで落とせます。
接続で詰まる場面
無線だけで使える機種でも、有線でつなげるかは確かめておくほうが安全です。OSが起動する前の画面では無線が効かないことがあり、次のような場面で困ります。
- BIOS/UEFIの設定画面に入りたいとき
- OSの起動前にディスクの暗号化を解除するとき
- USB切替器やKVMで複数のPCを行き来するとき
この3台はいずれもUSBでの有線接続に対応しているので、その意味では困りません。無線専用の機種を検討するときに確かめる項目だと考えてください。
まとめ:迷ったときの判断順
価格から選ぶと迷います。次の順に決めると絞れます。
- 矢印キーとファンクション行を手放せるか。手放せないならHHKBは外れます。Vim以外で使うアプリを思い浮かべて判断してください
- 高級キーボードが自分に合うか確かめる段階か。そうならホットスワップ対応のKeychronから入ると、合わなくてもスイッチ交換で調整できます
- 小指の負担が気になるか。気になるなら押下圧を選べるREALFORCEになります
- 打鍵音を抑える必要があるか。あるなら方式ではなく型番の静音表記を見ます
- テンキーを使うか。使うならフルサイズが選べるのはREALFORCEだけです
キーの位置そのものを設定で変えたいなら、機種選びとは別にVimmerがキーボード選びで重視すべきポイントを見てください。CtrlをCaps Lockの位置に移す話は、どの機種を買っても付いて回ります。ポインタ側の道具はトラックボールの比較にまとめています。